FX・CFDでトレード法人を設立するなら、株式会社と合同会社のどちらがよい?
FXのトレード用の法人を設立にあたり、株式会社と合同会社のいずれを選択すべきかを迷ってしまうという方も多いと思います。
結論からいうと、どちらを選択しても問題ないのですが、ここでは、2つの会社にどのような違いがあるかをご紹介いたしますので、選択の際の参考としていただければと思います。
1.株式会社、または合同会社が選択される理由
FXやCFDのトレードを事業とする営利会社を設立する場合、株式会社、または合同会社を設立するのが一般的です。
営利を目的とする営利法人の中には、この2種類の会社の他に、合資会社や合名会社といった種類の法人もありますが、これらの法人の場合、出資者の全部または一部が責任の無限責任になるので、有限責任の株式会社と合同会社に比べ、厳しい条件です。
無限責任と有限責任の違いは、簡単に説明すると、会社が倒産したときに、有限責任の場合は、出資者は出資した資金は回収できませんが、出資したもの以上の責任は負わないという限定的な責任であるのに対し、無限責任の場合は、出資した資金が回収できないだけでなく、会社の資産で倒産時の負債の支払いを行い、足りない分の負債の返済義務もあり、出資したもの以上に無限に責任が発生するという点です。
旧商法時代は、株式会社や有限会社(現在は新たに設立することはできません)に最低資本金が設定されていたため、合名会社や合資会社は小規模な事業を始める人に多少の需要がありましたが、現在では、最低資本金の制限が無くなったため、これらを選択する理由に乏しく、設立されることはほとんどありません。
2.株式会社と合同会社の違い
2-1.出資と経営の関係
株式会社と合同会社の大きな違いは出資と経営の関係です。
株式会社は出資(株主、会社の所有者)と経営が分離されています。
基本的には、出資者(株主)が株主総会で取締役等の役員を選び、選ばれた役員が経営を行うというのが株式会社の基本的な形態になります。
出資と経営が分離しているため、新たに株式を発行して株主や第三者から出資を受ける等、資金調達の自由度が高いという特徴もあります。
ただし、会社法では、株式会社に関しては、小規模な会社から大きな会社までを想定し、会社の規模に合わせた機関設計を行えるように規定しているので、株式会社でも、株主1人、取締役が1人(株主が取締役)という形態で、実質的には、出資と経営が分離されていない会社を設立することも可能です。
これに対し、合同会社は出資と経営が一致、つまり、出資者全員で経営を行うのが原則です。
基本的に出資のみではなく、出資者が経営に入ってくるのが原則となるため、資金調達に関しては、株式会社と比較すると、自由度は下がります。
個人の専業トレーダーが法人化する場合、出資と経営が分離されていないケースが多いので、株式会社と合同会社の違いは限定的ですが、出資と経営が分離するような形態で行いたい場合や、将来的にFXトレードに関する事業、またはその他の事業で広く資金調達を行う可能性もあるという場合は、株式会社を選択した方が良い場合もあります。
これに対し、合同会社を選択する主なメリットは、手続きの簡易さといえます。
合同会社に関する会社法の規定は、基本的に小さな会社を想定しているため、株式会社に比べると、手続が少し簡略化されているという特徴があり、運用の手間、費用を株式会社に比べると、少し抑えることができます。
例えば、会社設立手続きにおいて、株式会社の場合、公証人に定款を認証してもらう必要がありますが、合同会社の場合、この手続きは必要ありません。
また、株式会社の役員の任期は、最大で約10年間まで伸長することができますが、合同会社の場合は、任期の定めはないので、役員変更の手間を省略することができる等のメリットがあります。
以下、この2つの会社を選択するメリット、デメリットを紹介します。
どちらの会社にするか迷っているという方は参考にしていただければと思います。
3.株式会社を設立するメリット・デメリット
3-1.株式会社を設立するメリット
イメージが合同会社よりも良い
株式会社は合同会社よりも歴史が古く、知名度は合同会社に比べて高いです。
また、代表者の肩書きは株式会社は「代表取締役」なのに対し、合同会社は「代表社員」となります。
この「代表社員」という肩書きに違和感を感じるという方が多いので、株式会社を選択するという方もいるようです。
資金調達の方法が豊富
株式会社は株式を発行することで、市場から自由に資金を調達することができます。
これに対し、合同会社の場合は、前述の通り、出資と経営が一致しており、出資者が経営に参加するという特徴があるため、このような資金調達をするのは難しいです。
株式会社にしかできない事業もある
株式会社であることが許認可の条件とされている事業に関しては、合同会社は行うことができません。
これから行おうとする事業の種類によっては株式会社を選択する必要があります。
3-2.株式会社を設立するデメリット
設立、運用コストが高い
株式会社は設立時に公証人による定款認証が必要となるほか、運用においても決算公告が必要であったり、一定期間に役員変更の手続きが必要になるなど、合同会社と比較すると、手間とコストがかかるというデメリットがあります。
ただし、手間とコストがかかるだけに社会的信用も得ることができるので、必要コストと考えることもできます。
4.合同会社を設立するメリット・デメリット
4-1.合同会社を設立するメリット
設立、運用コストが安い
株式会社に比べ、登録免許税が割安であるほか、公証人の定款認証が不要となるため、設立にかかる費用が60,000円+印鑑等書費用〜と株式会社に比べ、低コストで設立できます。
また、役員の任期に制限がないので、役員の任期満了に関する登記手続費用が不要、また決算公告義務がないため、決算毎の公告費用が不要など、株式会社に比べ、運用コストを抑えることができます。
定款の自由度が高い
合同会社に関する規定は、小規模な事業を想定しているので、定款の内容も比較的自由に設定することができます。
このため、利益の分配に関する規定や機関設計に関しても株式会社に比べて自由に決めることができます。
例えば、株式会社の場合、基本的には出資比率に応じた分配が必要となりますが、合同会社の場合は、定款で自由に設定できるので、出資比率とは異なる分配を行うことも可能です。
4-2.合同会社を設立するデメリット
株式会社に比べ、イメージが悪い
株式会社の代表者の肩書きが「代表取締役」なのに対し、合同会社の代表者の肩書きは一般的にはまだ馴染みの薄い「代表社員」となり、違和感を感じる方もいるようです。
また、会社名を省略した場合に株式会社が「(株)」なのに対し、合同会社は「(同)」というのも同様です。
ただし、昨今では合同会社の設立数も増えいるので徐々に認知度は高まっており、あまり気にする必要もないかもしれません。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
出資と経営 | 分離 | 一致 |
社会的信用 | やや高い | やや低い |
意思決定 | 株主総会(基本的に多数決) | 社員総会(全員一致) |
出資の責任 | 有限責任 | 有限責任 |
株式公開 | できる | できない |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
役員の任期 | 最長で約10年 | 任期の定めなし |
利益の分配 | 出資比率に応じる | 定款で自由に設定可 |
決算公告の義務 | あり | なし |
設立時の定款認証 | 必要 | 不要 |
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款の印紙代 | 紙の場合 40,000円 電子定款の場合 0円 |
紙の場合 40,000円 電子定款の場合 0円 |
公証人定款認証手数料 | 3〜5万円(資本金による) | 0円(認証の必要なし) |
定款の謄本費用(公証役場) | 1000円〜2000円程度 (定款の枚数による) |
0円 |
登録免許税 (設立登記時) |
15万円または 資本金の1000分の7の高い方 |
6万円または 資本金の1000分の7の高い方 |
まとめ
結論から言えば、FXのトレード会社を設立するにあたり、選択する会社は株式会社でも合同会社でもどちらでも基本的には問題ありません。
ただし、株式会社と合同会社では出資と経営が一致するかどうかという違いがあるため、出資者と経営者が分離するような形態で運営したい場合や将来的に広く資金調達することを視野に入れているのであれば、株式会社を選択した方がよい場合があります。
また、株式会社の方が信用度の点で少し勝るため、外部と交流する機会が多いというようであれば、少し手間とコストをかけても株式会社を選択する方がよいかもしれません。
一方で、設立する会社は基本的に自分や身内だけのもので、外部と交流する機会も少ない、また、手間とコストは可能な限り抑えたいと言う場合は、合同会社の方がメリットがあると思います。
設立する会社がどのような会社かをイメージしながら、どちらにするかを考えてみましょう。
また、少し面倒ですが、後から必要に応じて、組織変更をして合同会社を株式会社に、または株式会社を合同会社に組織変更することも可能です。
本記事の執筆者
行政書士 サトー法務事務所 佐藤甲(行政書士)
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