FXで株式会社を設立する5つの流れを行政書士が解説
FXのトレードを事業とする株式会社を設立するまでの流れをご案内します。
ここでは、一番シンプルな株主1人、取締役(代表取締役)1人の発起設立(所謂、1人会社)の場合を例にご案内します。
株式会社設立までのステップは主に次の5つです。
- 1.設立する内容の決定
- 2.必要な書類、物の用意
- 3.定款の作成、公証人の認証
- 4.出資金の払い込み
- 5.設立登記申請
1.設立する株式会社の内容の決定
最初に設立する会社の名前や設置する機関、資本金等の設立する会社の基本的な内容を決定します。
1-1.発起人
会社設立手続きを行うにあたり、最初に発起人を決定します。
発起人とは、会社設立手続きのうち、定款の作成、認証や設立時の取締役の決定など、設立の初期の手続きを行う人です。
また、発起人は最低1株以上の株式を引き受ける必要があります。
出資者1人の会社の場合は、出資者が発起人として設立手続きを行います。
1-2.会社名(商号)
会社の名前(法律用語では、商号)を決定します。
株式会社の場合は、前後に会社の種類を示す「株式会社」を付記しなければなりません。
例:「株式会社○○○○」、「○○○○株式会社」
「株式会社」以外の部分は基本的に自由に決定できますが、使用できる文字等、一定のルールがあります。
会社名で使用できる文字は「漢字」、「ひらがな」、「カタカナ」のほか、「アラビヤ数字」「ローマ字(大文字・小文字)」です。
字句を区切る場合は、「&(アンド)」、「’(アポストロフィー)」、「,(コンマ)」、「-(ハイフン)」、「.(ピリオド)」、「・(中点)」を使用することができます。
ただし、ピリオドに関しては、省略を示す場合は、末尾にも使用できます。
このほか、ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。
また、同一住所に同一の商号を登記することはできません。
このため、登記しようとする住所に同一の会社名が登記されていないかを事前に調査をしておくことをお勧めします。
同一の商号かどうかは会社の種類を含めて同一の表示かどうかで判断されます。
また会社の種類の位置が一致していない場合は、同一と判断されないので、登記できます。
一方で、同じ文字で読み方が異なる場合も同一商号と判断され、登記できません。
同一住所で登記されている商号 | 登記したい商号 | 登記の可否 |
---|---|---|
株式会社おあんだ | おあんだ株式会社 | ○ |
合同会社おあんだ | 株式会社おあんだ | ○ |
株式会社おあんだ | 株式会社OANDA | ○ |
株式会社大和(読み方:ダイワ) | 株式会社大和(読み方:ヤマト) | × |
同一住所かどうかの判断は明確に区別できるかどうかで判断されます。
例えば、部屋番号等で明確に別の部屋であることがわかる場合は同一住所ではないと判断されます。
同一商号が登記されている商号 | 登記したい住所 | 登記の可否 |
---|---|---|
東京都中央区銀座1丁目1番1-101号 | 東京都中央区銀座1丁目1番1-201号 | ○ |
東京都中央区銀座1丁目1番1号 | 東京都中央区銀座1丁目1番1-201号 | × |
東京都中央区銀座1丁目1番1号 | 東京都中央区銀座1丁目1番1号銀座ビル | × |
商号の調査は法務局や「登記・供託オンライン申請システム」の「商号調査」で検索する方法が一般的ですが、国税庁の法人番号公表サイトでも登録なしで簡易的に検索することができます。
FXのトレードのみを事業とする会社であれば、商号に関してのトラブルに発展する可能性は低いと考えられますが、他の事業も考えている場合は、既存の会社(特に同じ業種)と紛らわしい商号を使用してしまうと、登記自体はできても、後に不正競争防止法の観点から、争いとなるリスクが残るため、商号を決める際はしっかりと調査を行うことをお勧めします。
1-3.本店の所在地
会社を登記する住所を決定します。
自宅でも問題ありませんが、自宅がマンション等の集合住宅の場合はマンションの規約、賃貸住宅の場合は、契約書等にて法人登記ができる内容になっているかを確認した方が、後のトラブルを避けるためにも良いと思います。
また、登記する住所には税務署や銀行等からの郵便物が届くため、郵便物が受け取れる場所でないと、事業を行う上で支障が出てくるため、郵便物を受け取れるようにしておく必要があります。
1-4.事業の目的
会社の事業目的を決定します。
この事業の目的は、設立に際し作成する会社の規則となる定款の絶対的記載事項であるほか、法務局に登記されますので慎重に決定する必要があります。
事業の目的は、簡潔に箇条書きでどのような事業を行うかを記載します。
FXのトレードであれば、シンプルに「外国為替証拠金取引」と定めても良いですし、「外国為替取引等の差金決済取引」や「株式、債券、外国為替、デリバティブ、ファンド等への投資業務」のように、他の投資を含む内容にしても大丈夫です。
このほか、設立する法人で行うことが想定される事業も併せて入れておきます。
例えば、ウェブサイトでアフィリエイト事業も行う場合は、「インターネットによる広告宣伝業」のように定めておきます。
また、箇条書きの最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」のように、関連する事業を行えるようなものを入れておくのが一般的です。
事業目的の記載例
- 1. インターネットによる広告宣伝業
- 2. Webサイト作成代行業
- 3. SEO対策コンサルティング業
- 4. 株式、債券、外国為替、デリバティブ、ファンド等への投資業務
- 5. 前各号に付帯関連する一切の事業
1-5.資本金の額
会社の資本金の金額を決定します。
設立時の資本金は、会社が事業を行うために、株主が設立の際に出資した資金です。
旧商法時代は株式会社は設立時の資本金が1000万円以上と法律で定められていましたが、現在は法改正が行われ、この制限は撤廃されましたので、1円でも設立ができるようになりました。
ただし、1円では、設立費用すら払えないため、現実的には、1円で設立するケースは稀で、実施する事業に適した資本金を出資するのが一般的です。
ちなみに、FXのトレードを行う場合に必要な資金は業者に預け入れる証拠金がメインとなりますが、この証拠金に預け入れる金銭は必ずしも資本金でなくても問題ありません。
例えば、個人から設立した会社に金銭を貸し付け、その金銭を証拠金として業者に預け入れるということも可能です。
この方法であれば、会社に貸し付けた分は、貸付金の返金として引き出すことも可能です。
このように、資本金は、トレードで必要な証拠金分必要というわけではありませんので、会社の設立費用や数ヶ月〜1年分の運用に必要な金額で設定すれば十分なので、運用資金にもよりますが、100万円程度〜に設定しておけば、問題なく運営ができると思います。
もちろん、資本金は多ければ、多いほど会社の信用度は上がりますし、余裕を持った経営ができるので良いのですが、一定額を超えると税金面や手続き面で不利になることもあるという点には注意が必要です。
1-6.公告をする方法
株式会社は毎年、決算公告をする必要があります。
このほか、株主に不利な変更をする場面や債権者の保護が必要な決定をした場合等に法律で公告をすることが義務付けられています。
この「公告をする方法」は、定款に記載するのが一般的なほか、登記事項でもあります。
公告をする方法は次の3つから選択することができます。
①官報
政府が発行する官報に掲載する方法です。
掲載費用がかかりますが、次の日刊新聞紙と比較すると割安なので、選択する企業は多いです。
また、決算公告のみ電子広告にして、その他の公告を官報にするという方法も選択することができます。
ただし、この場合、決算公告を行うURLを登記する必要がありますので事前にURLを用意が必要となります。
ちなみに、定款で定めなかった場合は、この官報に掲載する方法になります。
②日刊新聞紙
新聞社が発行する新聞に掲載する方法です。
費用が一番高いので、小規模な会社で採用する会社は少ないです。
③電子公告
ウェブサイトに掲載する方法です。
ウェブサイトの管理を行うことができる場合は、一番費用が安いですが、決算公告以外の公告を行う場合は、電子公告調査機関に対して調査を委託しなければならず、この調査の費用が官報に掲載するより高い場合が多いというのが難点です。
1-7.発行する株式に関して
①発行する株式の種類、発行することができる株式総数、設立に際し発行する株式総数
設立する会社が発行できる株式の種類、発行することができる株式総数、そして、1人会社の場合は、この時点で設立に際して発行する株式の数を決めてしまいます。
会社法では、様々な種類株式を発行することができるように規定されていますが、小規模な会社で株主が限定的な場合は、普通株式のみで設立するのが一般的で、管理もしやすいです。
ちなみに、会社の成長に応じ、種類株式が必要になるようであれば、後から追加することもできます。
発行することができる株式総数は任意の数で決定します。
株主1人であれば、1株でも1000株でも10,000株でも大丈夫です。
設立に際して発行する株式数は、後述する公開会社の場合は、発行できる株式総数の4分の1以上という制限がありますが、小規模な会社で想定される非公開会社の場合は、制限がないため、発行することができる株式総数の範囲内であれば、1株以上の任意の数を決定します。
②株式の譲渡制限規定
株式会社は株主が出資をし、株式を引き受けるという形式です。
株主は、この引き受けた株式を、自由に他人に譲渡し、資金を回収できるのが原則です。
このように自由に株式を譲渡する会社を会社法上、公開会社と規定しています。
一方で、小規模な会社では、株主が入れ替わってしまうと、株主総会のメンバー構成が大きく変更となり、経営方針がコロコロ変わり、事業に支障をきたす可能性が出てきます。
このため、会社法では、定款で株式の譲渡を制限することできるようにしています。
この株式の譲渡に制限がかかっている会社を非公開会社と規定しています。
非公開会社は小規模で閉鎖的な会社を対象としたものなので、非公開会社の方が、機関設計や手続きが簡素化されていることもあり、スタートアップの会社は、この株式の譲渡制限をつけるのが一般的です。
株式の譲渡制限の規定の例
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
1-8.期間設計
①設置する機関の決定
株式会社にどのような機関を設置するかを決定します。
株式会社で最低限必要な機関は、株主総会と取締役です。
小規模な会社であれば、株主総会、取締役1名で運営することができ、事務処理も最低限のもので済みます。
その他、必要に応じ、取締役を増やしたり、取締役会を設置したり、監査役を置いたりすることもできます。
今回は株主1人、取締役(代表取締役)1人の小規模な会社を想定して説明をさせていただくので、細かい機関設計に関しての説明は割愛させていただきます。
②役員の任期
会社法では、株式会社の役員の任期は、取締役の任期が選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、監査役の任期が選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと規定されていますが、非公開会社の場合、取締役と監査役は定款で定めることにより、最長で選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。
任期満了後の役員に関しては、役員の任期が満了する株主総会において任命します。
役員は、同一人物を再選することも可能です。
株主1人、取締役1人の会社も例外ではなく、株主総会で再度取締役を任命し直し、法務局で再任した旨の登記を申請する必要があります。
小規模な会社の場合、事務処理や登記コスト軽減のため、定款でこの任期を10年に伸長する規定を定めておくのが一般的です。
1-9.事業年度
設立する会社の事業年度を決定します。
事業年度は1年以内で定める必要があり、一般的には、毎年○月○日から翌年○月○日というように年1回で定めます。
事業年度は自由に決定できますが、決算期が事業の繁忙期と重ならないように設定します。
日本の企業の場合は税制の改正が4月1日から適用というケースが多いことや公的機関の事業年度に合わせるために毎年4月1日から翌年3月31日というケースが多いようです。
1-10.資本金の支払い場所
設立登記が完了し、銀行口座を開設するまでは、会社の銀行口座はありません。
このため、出資金は発起人の口座に振り込み必要があります。
出資金の支払い場所(銀行口座)をどの口座にするかを決める必要があります。
2.必要な書類、物の用意
2-1.会社の印鑑
商号(会社名)が決定したら、会社の印鑑を作成します。
近所の印鑑専門店やインターネットの印鑑専門店等で作成することができます。
会社の登記申請や契約書への押印等で設立に際し、必ず必要なのが、代表者印です。
このほか、銀行口座用の印鑑や請求書等に押す角印を併せて作るのが一般的で、3点セットで販売しているケースが多いです。
ただし、最近では、電子取引が増加し、印鑑を押す場面も減ってきており、特に小規模なスタートアップ企業等では、銀行印も兼ねる代表者印のみ作成するというケースも増えてきているようです。
2-2.代表者個人の印鑑、印鑑証明書(市区町村役場作成)
公証人の定款認証、法人の設立登記、会社の代表者印の登録において、添付が必要です。
各手続は申請すると、原本還付をすることができるので、1枚あれば使い回すこともできます。
印鑑証明書は、市区町村の役所で発行できるほか、最近では、コンビニエンスストアで取得することができる市区町村も増えています。
印鑑の登録をまだしていない場合は、登録をする個人の印鑑を持参し、市区町村の役所の窓口で申請すると、登録することができます。
市区町村により申請、受け取り方法や登録の手数料等が異なるため、お住まいの市区町村でご確認ください。
また、登録までに数日かかる場合もあるため、余裕を持って登録しておくことをお勧めします。
3.定款の作成、公証人の認証
3-1.定款の作成
決定した内容を元にWord等のソフトを使用し、定款を作成します。
定款に記載する内容は、必ず必要な「絶対的記載事項」、必ず必要ではないが、定款で定めなければ、効力が認められない「相対的記載事項」、会社法の規定に反しない限り、定款に規定できる「任意的記載事項」があります。
絶対的記載事項
- ①商号
- ②事業の目的
- ③本店の所在地※1
- ④設立に際して出資される財産の価額または、その最低額
- ⑤発起人の氏名(名称)、住所
- ⑥発行可能株式総数※
※1 定款では最小行政区画(市区町村)までを記載します。
全住所を定款で定めることもできますが、同じ市区町村内で移転した際も定款変更を行わなければならいため、一般的には市区町村までを記載します。
※2 厳密には絶対的記載事項ではないので、定款認証の段階ではなくても大丈夫ですが、設立までに定款で定める必要があるので、ここでは、絶対的記載事項の中に入れてあります。
定款認証後、定款変更する手間を考えると、最初に定めておいた方が効率的です。
相対的記載事項の例
- ・株式の譲渡制限に関する規定
- ・株券を発行する旨の規定
- ・役員の任期伸長の規定(役員の任期を10年に伸ばす規定)
- ・取締役会や監査役の設置
- ・公告する方法(定めない場合は「官報」になる)
- ・設立時の出資が金銭ではない場合の現物出資や財産引受に関する規定
- ・発起人の報酬や設立費用
任意的記載事項の例
- ・株主総会に関する事項(基準日、招集時期、議長等)
- ・役員の人数
- ・事業年度
記載内容に関しては、日本公証人連合会が提供している記載例等を参考にすると、スムーズに作成できると思います。
定款の記載例
※記載例です。設立する会社の内容に合わせて作成する必要があります。
株式会社〇〇〇〇 定款
第1章 総 則
(商号)
第1条 当会社は、 株式会社○○○○と称する。
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
- 1. インターネットによる広告宣伝業
- 2. Webサイト作成代行業
- 3. SEO対策コンサルティング業
- 4. 株式、債券、外国為替、デリバティブ、ファンド等への投資業務
- 5. 前各号に付帯関連する一切の事業
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都千代田区に置く。
(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
第2章 株 式
(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、1000株とする。
(株券の不発行)
第6条 当会社の発行する株式については、株券を発行しない。
(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
2 前項の承認を行わない場合、当会社は指定買取人を定めることができる。
(基準日)
第8条 当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
2 前項のほか、必要があるときは、代表取締役は、あらかじめ公告して、臨時に基準日を定めることができる。
(株主の氏名等の届出)
第9条 当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人は、当会社所定の書式により、氏名、住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。
2 前項の届出事項を変更したときも、同様とする。
第3章 株 主 総 会
(招集時期)
第10条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時総会は、必要に応じて招集する。
2 株主総会を招集するには、会日より5日前までに、各株主に対して招集通知を発するものとする。
(招集権者及び議長)
第11条 株主総会の議長は、法令に別段の定めがある場合を除き、代表取締役が招集する。
2 株主総会の議長は代表取締役がこれに当たる。
3 代表取締役に事故があるときは、当該株主総会で株主の中から議長を選出する。
(招集手続きの省略)
第12条 株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく開催することができる。
(決議)
第13条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合のほか、出席した議決権のある株主の議決権の過半数をもって決する。
第4章 取 締 役
(取締役の員数)
第14条 当会社の取締役は1名以上とする。
(取締役の選任)
第15条 当会社の取締役は、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。
2 取締役の選任については、累積投票によらないものとする。
(取締役の任期)
第16条 取締役の任期はその選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 補欠又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。
(代表取締役及び社長)
第17条 取締役が2名以上ある場合は、そのうち1名以上を代表取締役とし、株主総会の決議でこれを定める
2 代表取締役は、当会社を代表する。
(報酬等)
第18条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として、当会社から受ける財産上の利益は、株主総会の決議によって定める。
第5章 計 算
(事業年度)
第19条 当会社の事業年度は年1期とし、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。
(剰余金の配当等)
第20条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在における株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に配当する。
2 剰余金の配当が、その支払の提供の日から満3年を経過しても受領されないときは、当会社はその支払の義務を免れるものとする。
第6章 附 則
(設立に際して出資される財産の価額)
第21条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。
(設立後の資本金の額)
第22条 当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。
(最初の事業年度)
第23条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から令和〇〇年3月31日までとする。
(設立時の取締役)
第24条 当会社の設立時の役員は次の通りとする。
設立時取締役 オアンダ 太郎
設立時代表取締役 オアンダ 太郎
住所 東京都新宿区○丁目○番○号
(発起人の氏名、住所等)
第25条 発起人の氏名、住所及び発起人が設立に際して引き受けた株式数及び設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
住所 東京都新宿区○丁目○番○号
氏名 オアンダ 太郎 100株 金100万円
(法令の準拠)
第26条 この定款に規定のない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。
以上、株式会社〇〇〇〇の設立のため、発起人 オアンダ 太郎は電子的記録であるこの定款を作成し電子署名する。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
発起人 オアンダ 太郎
3-2.実質的支配者となるべきものの申告書の作成
また、定款と合わせて、「実質的支配者となるべきものの申告書」を用意します。
日本公証人連合会のページより用紙をダウンロードすることができます。
実質的支配者となるべき者の申告書の記載例
※記載例です。設立する会社の内容に合わせて作成する必要があります。
3-3.公証役場で定款の認証
定款の作成が完了したら、公証役場に連絡し、定款の認証をしたい旨を伝え、定款の内容のチェック、公証を行う日の調整等を行います。
公証人の指示に従い、定款の原案等を送付(FAX、メール等)し、定款の記載内容や交渉手続きに必要なもの等を確認してもらったら、公証役場で認証をしてもらいます。
紙の定款の場合は、定款をプリントアウトし、最終版の定款を作成します。
電子定款の場合は、電子署名※を行い、公証人にデータを送付します。
※電子定款の場合は、電子署名をするための環境を用意する必要があります。
また、最終版の電子定款の送付は登記・供託オンライン申請システムを使用します。
基本的には公証役場に出向いて公証を行いますが、最近ではテレビ電話システムを使用した認証サービスも行われています。
4.資本金の払い込み
定款の認証が完了したら、発起人の口座に資本金の払い込みを行います。
一人会社の場合は、自分の口座に資本金を振り込むという手続きを行います。
法務局における設立手続きにおいて、口座内のどの部分が出資金分かを確認する必要があるので、出資金分が既にその口座に資金が預け入れられている場合でも、一度資金を出金し、入金し直し、どの部分が出資金かを明らかにする必要があります。
5.登記申請手続き
定款の認証が完了したら、法務局に登記申請を行います。
申請後、不備がなければ、1〜2週間で登記が完了します。
ただし、法務局の混雑状況によっては、それ以上かかる場合もありますので、お急ぎの場合は、事前に申請する法務局に確認しておくことをおすすめします。
ちなみに、会社の設立日は、登記申請書を提出した日となりますので、設立日にこだわりがある方はご注意ください。
登記申請の方法は、紙を基本に法務局へ持参する方法、オンラインで申請する方法があります。
いずれかの方法を選択しますが、会社設立等の手続きに不慣れな方や電子署名用の環境が用意されていないという方の場合は法務局へ持参する方法の方がお勧めです。
この場合、法務局で事前に予約すると、申請内容の確認もしてもらうこともできるので、不備を未然に防ぐことができます。
ここではシンプルな紙で申請する方法でご案内します。
また、申請にあたり、法務局のウェブサイトの登記申請に関連するページもご参照ください。
以下、取締役(代表取締役)1人の株式会社の設立を想定し、書面で申請する場合の提出書類(定款以外)の例です。
※登記申請書類の記載例です。
設立する会社の内容に合わせて作成する必要があります。
①設立登記申請書
設立登記の申請書です。設立登記を申請する旨、登録免許税、添付書類等を記入します。
印鑑は作成した会社の代表印を押印します。
株式会社設立登記申請書
フリガナ カブシキガイシャ○○○○
1.商 号 株式会社○○○○
1.本 店 東京都千代田区○○○丁目○番○号
1.登記の事由 令和○年○月○日発起設立の手続終了
1.登記すべき事項 別紙の通り
1.課税標準金額 金 100万円
1.登録免許税 金 15万円
1.添付書類
定款 1通
発起人の決定書 1通
就任承諾書 1通
払い込みを証する書面 1通
印鑑証明書 1通
上記のとおり,登記の申請をします。
令和○年○月○日
申請人 東京都千代田区○○○丁目○番○号
株式会社○○○○
東京都新宿区○丁目○番○号
代表取締役 オアンダ 太郎
連絡先の電話番号 ○○○ー○○○○ー○○○○
東京法務局 御中
②収入印紙貼付台紙
収入印紙を貼り付ける台紙です。
収入印紙貼付台紙
③登記すべき事項
登記する内容を記載した書面です。
「商号」株式会社○○○○
「本店」東京都千代田区○○○丁目○番○号
「公告をする方法」官報に掲載する方法により行う。
「目的」
1.インターネットによる広告宣伝業
2.Webサイト作成代行業
3.SEO対策コンサルティング業
4.株式、債券、外国為替、デリバティブ、ファンド等への投資業務
5.前各号に付帯関連する一切の事業
「発行可能株式総数」1000株
「発行済株式の総数」100株
「資本金の額」金100万円
「株式の譲渡制限に関する規定」当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」オアンダ 太郎
「役員に関する事項」
「資格」代表取締役 オアンダ 太郎
「住所」東京都新宿区○丁目○番○号
「氏名」オアンダ 太郎
「登記記録に関する事項」設立
④発起人の決定書
最小行政区画以降の住所と資本金の払い込み場所を発起人が決定したことを記載した書面です。
印鑑は発起人の印鑑を押印します。
発起人の決定書
令和4年○月○日、株式会社○○○○創立事務所において発起人 オアンダ 太郎は、次の通り決定した。
①本店所在地
本店 東京都千代田区○○○丁目○番○号
②払込みを取扱う金融機関及び取扱場所
取扱場所:東京都千代田区○○
名称:株式会社○○銀行 ○○支店
上記決定事項を証するため、発起人が次に記名押印する。
令和○年○月○日
株式会社○○○○
東京都新宿区○丁目○番○号
発起人 オアンダ 太郎
⑤就任承諾書
取締役、代表取締役の就任承諾書を添付します。
印鑑は個人の印鑑を押印します。
就任承諾書
私は,令和○年○月○日,貴社の設立時取締役、代表取締役に選任されたので,その就任を承諾します。
令和○年○月○日
東京都新宿区○丁目○番○号
オアンダ 太郎
株式会社○○○○御中
⑥払い込みがあったことを証する書面
出資金の払い込みがあったことを証する書面を作成します。
証明書に通帳のコピー(紙の通帳の場合、表紙、見開き1ページ目の口座情報の記載のあるページ、出資金の振込の記載がある部分、ネットバンキングの場合は、口座情報が確認できるページ、資本金の振込が確認できる部分をプリントアウト)を合綴します。
印鑑は会社の代表者印を押印します。
証明書
当会社の設立時発行株式については以下のとおり,全額の払込みがあったことを証明します。
設立時発行株式数 100株 払込みを受けた金額 金100万円
令和○年○月○日
東京都千代田区○○○丁目○番○号
株式会社○○○○
設立時代表取締役 オアンダ 太郎
⑦印鑑証明書
市区町村役場が作成した代表者個人の印鑑証明書を添付します。
⑧印鑑届出書
設立登記と併せて会社の印鑑の登録申請を行います。印鑑は会社の代表者のものと、代表者個人の印鑑を押印します。
設立登記が完了すると、設立手続きが完了となります。
まとめ
ここまでが株式会社を設立するまでの手続きの流れです。
これらの手続きが面倒という場合は、専門家に依頼することもできます。
会社設立の手続きは、主に行政書士、司法書士、税理士等が行なっています。
>会社設立や設立後の手続きについて、専門家に依頼するなら、誰に依頼する?
また、会計ソフト会社のウェブサイトなどで必要条件を入力すると、設立に必要な書類を作成してくれるサービスなどもあります。
このほか、最近では、電子定款の場合は、一定の条件を満たすと次の登記申請の手続きまでを一括で行うことができる法務局のサービスやマイナンバーカードを使用して、設立手続きをワンストップで行うデジタル庁のサービスも開始しており、申請条件をクリアできる場合は、設立手続きをスムーズに行うことができます。
ご興味のある方は、サービス内容を確認してみましょう。
本記事の執筆者
行政書士 サトー法務事務所 佐藤甲(行政書士)
税理士・行政書士・社会保険労務士によるFX・CFDの法人口座に関する記事一覧
税理士・行政書士・社会保険労務士など専門家によるFX・CFDの法人口座に関する記事一覧です。
FX・CFDの法人口座のメリット・デメリットから会社設立、設立後の事後処理や届出までを詳しく解説しています。
これから法人口座を検討している方は、ぜひ「FX・CFDの法人口座に関する記事一覧」から記事を読み進めてください。
本ホームページに掲載されている事項は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資方針、投資タイミング等は、ご自身の責任において判断してください。本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。