投資ファンドの5つの運用戦略についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
本記事の執筆者
肥沼誠(弁護士) | 京都大学法学部卒(1995年)、早稲田大学大学院法務研究科卒(2007年)、ペンシルバニア大学ロースクール法学修士号取得(2014年)、日本と米国NY州の弁護士資格を持つ。 主に、コーポレート、M&A及び金融サービスを中心として業務を行っている。 ファンドの組成・運用、ライセンス及び規制対応に多くの経験を有し、幅広いファンド、ブローカー、金融機関及びFinTech企業(資金移動業者、暗号資産交換業者、オンライン証券会社、キャッシュマネジメントサービス、ポイントプログラム等)に対して助言も行っている。 GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLPの東京事務所)に所属。 |
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荒川真里(弁護士) | 慶応義塾大学法学部卒(2016年)、中央大学法科大学院卒(2018年)、日本の弁護士資格を持つ。 主に、一般企業法務,金融関係,IPO関係およびゲーミング産業を中心として業務を行っている。 司法試験合格後,司法修習(第72期)を経てGT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLPの東京事務所)に参画。 |
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1.投資ファンドの運用戦略
投資ファンドは、さまざまな運用手法を採用し運用を行っています。
特にヘッジファンドは、市場が上昇している場合でも、下落している場合でも、さまざまな運用戦略を駆使してリスクをヘッジ(回避)し、絶対的な収益を狙っています。
今回は、投資ファンドの運用戦略について、主にヘッジファンドに焦点をあてて説明します。
2.ロング・ショート
ロング・ショートとは、安く買って高く売るという、買いから入るロングと、高く売って安く買うという、売りから入るショートの、2つを組み合わせる運用戦略です。
例えば、類似業種の中で、相対的に割安と思われる銘柄を購入すると同時に、割高と思われる銘柄のショートポジションを設定することで、想定どおりに相場が動けば利益を得ることができます。
ファンドがロングのみ取引する場合、値下がりが予想される銘柄は持たないという消極的な判断になりますが、ショートも組み合わせることで、当該銘柄の取引を行い、収益を狙うことができます。
市場全体が上昇すると予想する場合は、ロングをショートより多く組み入れ、市場が下落すると予想する場合は、その逆を組成することで、市場全体の値動きによるリスクを制御しながら、市場全体の値動きによる利益の獲得も図っています。
3.アービトラージ
アービトラージとは、同一の株式について異なる取引所間で価格差が生じた際に、価格が高い取引所では売り、価格が安い取引所では買い、その後、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を獲得しようとする運用戦略です。
取引所間で生じる価格差はそれほど大きくない場合が多く、1回の取引によって得られる利益は少ないため、高い売買頻度で取引を行う高速取引業者などが多く採用しています。
また、ファンドがアービトラージ戦略に基づく取引を行うことによって取引量が増加するため、市場の活性化にも貢献していると一般に考えられています。
4.イベントドリブン
イベントドリブンとは、企業の合併・買収、株式公開、株式非公開化など、株価が大きく変動するような重要なイベントに焦点をあてて投資する戦略です。例えば企業の買収が公表された場合、その後買収が成立するかはわからないため、市場価格は買収企業が提示した価格より低い水準で値動きする場合があります。
ファンドは、この時点で株式を買い、のちに買収が成立した時点あるいは株価が購入価格を上回った時点で売ることで、収益を狙うことができます。
5.マーケットニュートラル
マーケットニュートラルとは、ロングとショートを同じ金額で組み合わせることで、市場全体の値動きの影響を受けずに、固有銘柄の価格変動から収益を狙う戦略です。
購入した銘柄の市場全体の値動きによるリスクを減らすために、日経平均株価等の指数先物を市場全体の値動きを反映するものとみなして、株価指数先物のショートポジションを設定します。
割安銘柄の株式を購入していた場合、市場の値動きが上昇すると、保有銘柄の株価も上昇することが一般的です。
この場合、ショートポジションの株価指数先物を高く買い戻すことになりますが、保有する銘柄の株価が当該株価指数先物を上回る値上がりをすると、利益が生じます。
つまり、市場の値動きによる影響は受けずに、保有している銘柄の価格変動による収益を図ることができる戦略です。
6.マルチストラテジー
マルチストラテジーとは、一つのファンドが、ロング・ショートやアービトラージなど複数の投資戦略を駆使して運用する戦略です。
戦略ごとにファンドマネージャーを置き、経済情勢や市場の動き、戦略ごとのパフォーマンスを考慮しながら、資産の配分を組み換えたり、収益が望める戦略に重点的に投資したりします。
したがって、一つの戦略で運用をする場合に比べリスクをコントロールでき、分散投資を行うため、長期的に安定的なリターンの獲得を目指します。
近年は、市場の価格変動が不安定な場合の投資家からの解約を避けるために、長期にわたって投資家の資金を確保し投資することが可能となるマルチストラテジーを採用するヘッジファンドが増えています。
●GT東京法律事務所によるファンドの組成、法務、税務解説記事一覧
OANDA証券では、GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLPの東京事務所)監修のもと、ファンドの組成、法務、税務などのコンテンツを豊富に提供しています。
0.イントロダクション – ファンドの組成、法務、税務について専門家が解説
OANDA証券に寄稿いただいているGT東京法律事務所に所属する弁護士の方の紹介ページです。
1.ファンドとは?メリット・デメリットをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドとは、複数の投資家たちから集めたお金をまとめ、投資の専門家に運用を任せて利益を分配する仕組みです。
本記事では、ファンドの詳細やメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
2.ロボアドバイザーとは?ファンドとの違いをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドと同じようなサービスに、ロボアドバイザーというものがあります。
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本記事では、ファンドの種類について詳しく解説します。
4.ヘッジファンドとは?プライベートエクイティファンドとは?違いをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの種類には、ヘッジファンドとプライベートエクイティファンド(PEファンド)があります。
本記事では、ヘッジファンドとプライベートエクイティファンドとはどのようなものか、それぞれの違いについて詳しく解説します。
5.ベンチャーファンドとは?不動産ファンドとは?特徴をGT東京法律事務所の弁護士が解説
プライベートエクイティファンドの種類の一つに、ベンチャーファンドや不動産ファンドなどがあります。
本記事では、ベンチャーファンドや不動産ファンドはどのようなものかについて詳しく解説します。
6.アクティビスト・ファンドとは?株主権の行使方法や歴史をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドには、アクティビスト・ファンドというものがあります。
本記事では、アクティビスト・ファンドとはどのようなものかについて詳しく解説します。
7.投資信託とは?投資法人とは?概要をGT東京法律事務所の弁護士が解説
個人投資家にとって身近なファンドの方形式は、投資信託です。
本記事では、投資信託及び投資法人の概要について詳しく解説します。
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日本で投資ファンドを組成する場合、匿名組合や投資事業有限責任組合が多く使われています。
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9.なぜ外国籍ファンドはケイマン諸島が多いのか?4つの理由をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ケイマン籍のファンドは、投資家やファンドマネジャーからの人気が高い外国籍ファンドの一つです。
本記事では、ケイマン籍のファンドが人気な理由について詳しく解説します。
10.ルクセンブルク籍ファンドの4つの種類をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ケイマン籍のファンドの他にも、ルクセンブルク籍ファンドも人気を集めます。
本記事では、ルクセンブルク籍ファンドが人気の理由について詳しく解説します。
11.プロ向けのファンドと個人投資家向けのファンドの違いをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドには、個人投資家を対象としたもの以外に、個人投資家を対象としていないものも多くあります。
本記事では、プロ向けの投資ファンドについて詳しく解説します。
12.投資ファンドの5つの運用戦略についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ヘッジファンドでは、相場がどちらに動いてもいいように、様々な運用戦略を駆使して絶対的な収益を狙います。
本記事では、ヘッジファンドの運用戦略について詳しく解説します。
13.ファンドの運用・販売に関する法令(金商法、投信法、その他)をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの販売や運用には、様々な法律に気をつけなければなりません。
本記事では、わが国日本でファンドの販売や運用をするにあたり、どのような法律が適用されるのか詳しく解説します。
14.ファンドの販売で必要なライセンスをGT東京法律事務所の弁護士が解説
日本国内でファンドの運用や販売を行うには、登録や届け出などが必要です。
本記事では、ファンドの運用や販売を行う上で必要なライセンスについて詳しく解説します。
15.ファンドの開示(公募)要件をGT東京法律事務所の弁護士が種類ごとに解説
ファンドの有価証券を日本の投資家に対して発行する場合、原則としてファンドの情報についての開示が必要です。
本記事では、具体的にどのような情報を発行しなければならないのか、発光する有価証券ごとに詳しく解説します。
16.ファンドの開示(私募)の要件をGT東京法律事務所の弁護士が種類ごとに解説
ファンドを発行する場合、原則有価証券届出書による開示が必要ですが、私募として発行開示規制が免除される場合があります。
本記事では、ファンドが発行する有価証券の種類により私募の要件は異なるため、その種類ごとに私募の要件を詳しく解説します。
17.ファンドの運用に必要なライセンスをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの運用者は、いくつかのライセンスが必要です。
本記事では、ファンドの運用に必要なライセンスについて詳しく解説します。
18.ファンド運用ライセンスの例外をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドを日本国内で販売する際は、投資運用業の登録が原則必要ですが、例外もあります。
本記事では、ファンドを日本国内で販売する場合でも、例外的に投資運用業の登録を必要としないケースについて詳しく解説します。
19.ファンド販売・運用ライセンスの例外(適格機関投資家等特例業務、海外投資家等特例業務、移行期間特例業務)
本記事では、ファンドを日本国内で販売する際の例外である、適格機関投資家等特例業務、海外投資家等特例業務、移行期間特例業務について詳しく解説します。
20.ファンドの設立手順についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドを設立するにはどうしたらよいでしょうか?
本記事では、投資信託の設立手順や投資事業有限責任組合によるファンド設立手順、ケイマン籍Exempted Limited Partnershipによるファンド設立手順について詳しく解説します。
21.ファンドの発行で必要となる届出や登録などについてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの販売や運用では様々なラインセンスが必要ですが、ファンドの発行に当たっては、種類に応じて届け出や登録が必要です。
本記事では、種類に応じてファンドの発行において必要な届け出や登録について詳しく解説します。
22.ファンドの投資対象、投資信託の投資対象の制限についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドは、不動産や株式などが一般的ですが、FXやCFDなどを対象としたものもあります。
本記事では、FXやCFDを対象としたファンドはどのようなものか詳しく解説します。
23.契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの発行にあたり必要なものに、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面があります。
本記事では、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面について詳しく解説します。
24.目論見書とは?仕組みや交付義務などをGT東京法律事務所の弁護士が解説
目論見書は、有価証券に関する情報を投資家へ確実に届ける手段として作成されるものです。
本記事では、目論見書の詳細や作成義務、交付義務などについて詳しく解説します。
25.リミテッド・パートナーシップ契約(LPA)とは?特徴的な10の条項をGT東京法律事務所の弁護士が解説
リミテッド・パートナーシップ契約(LPA)とは、外国籍PEファンド等で多く採用されるリミテッド・パートナーシップ形式のファンドにおける基幹契約のことです。
本記事では、LPAにおける契約条項のうち、特徴的な条項をいくつか詳しく解説します。
26.引受契約とは?規定される3つの事項についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
リミテッド・パートナーシップ契約(LPA)では、引受契約というものが締結されます。
本記事では、引受契約で規定されるいくつかの事項について詳しく解説します。
27.覚書(サイドレター)とは?盛り込める内容についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
覚書(サイドレター)とは、投資家との間で、LPAや引受契約に明記されていない事項を取り決めたり、既存の契約内容を変更するための覚書です。
本記事では、覚書(サイドレター)の詳細について詳しく解説します。
28.投資家への運用財産に関する報告義務についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの運用者は、投資家に対してファンドの運用状況等を記載した運用報告書の作成、交付義務が規定されています。
本記事では、ファンドへの投資後に、投資家に対して行われる運用財産に関する報告について詳しく解説します。
29.ファンド持分の償還についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
投資資金の回収方法には、いくつかありますが、償還という方法が一般的です。
本記事では、償還の仕組みについて詳しく解説します。
30.ファンドの終了|清算と解散手続きについてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドが活動を終了する場合には、いくつかの手続きが必要です。
本記事では、LPAで規定されるファンドの解散及び清算について詳しく解説します。
31.有限責任と無限責任の違いとは?有限責任の重要性や例外等について詳しく解説
ファンドには、リスクがつきものです。
本記事では、ファンドのリスクである限責任・無限責任の違い、投資家の有限責任の重要性及びその例外について詳しく解説します。
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