プロ向けのファンドと個人投資家向けのファンドの違いをGT東京法律事務所の弁護士が解説
本記事の執筆者
肥沼誠(弁護士) | 京都大学法学部卒(1995年)、早稲田大学大学院法務研究科卒(2007年)、ペンシルバニア大学ロースクール法学修士号取得(2014年)、日本と米国NY州の弁護士資格を持つ。 主に、コーポレート、M&A及び金融サービスを中心として業務を行っている。 ファンドの組成・運用、ライセンス及び規制対応に多くの経験を有し、幅広いファンド、ブローカー、金融機関及びFinTech企業(資金移動業者、暗号資産交換業者、オンライン証券会社、キャッシュマネジメントサービス、ポイントプログラム等)に対して助言も行っている。 GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLPの東京事務所)に所属。 |
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1.ファンドが対象とする投資家
これまでいくつかの種類のファンドを見てきました。
投資対象による違い、投資方針や利益の追求方法による違い、ファンドの仕組みによる違いなど、いくつかの観点からファンドが分類されることが分かりました。
これまでも折を見て触れてきましたが、今まで見てきたファンドは、全てが個人投資家が投資の対象とできるファンドであるわけではなく、一般の個人投資家を対象としていないファンドも多くあります。
2.プロ投資家向けのファンド
例えば、ヘッジファンドは、巨額の資金を様々な投資手法を使って運用し絶対的な収益を目指すファンドですので、通常その投資単位は数千万円以上と、機関投資家等のプロ投資家又は富裕層を対象としています。
最近では、最低投資金額を数百万円から1千万円程度に設定するヘッジファンドなどもあるようですが、それでも一般の個人投資家が出資するには敷居が高いと言えます。
また、PEファンドやベンチャーファンドなどは、投資対象が非上場会社の株式であり、投資先企業の株式市場への上場や第三者への売却により投資資金の回収を図るため、途中解約できないのが原則となっています。
このため、急な資金需要があってもファンドに投資した資金を現金にすることができません。
このため、対象となる投資家はプロ又は富裕層であり、一般の個人投資家は対象とされません。
これらのファンドは、プロ向けの私募として販売することで、法令上の情報開示や投資家保護について最低限の規制しか受けないため、これらに係るコストを抑えることができます。
また、その投資活動に対する法令上の規制が限られているため、例えばヘッジファンドなどは市場の動向に応じて柔軟に投資手法を組み合わせて対応することで利益を追求していくことができます。
リスクの観点からも、投資家をプロに限定することで、経営不振に陥った企業の再生を通じて利益の実現を目指す企業再生ファンドのように、よりハイリスク・ハイリターンの投資方法や投資対象を選択することが可能となります。
3.個人投資家向けのファンド
これに対して、投資信託は、まさに個人向けに設定されるファンドです。
投資金額は1万円程度から始められます。
積立型の投資信託の場合には、毎月数千円程度の資金で投資を始められる商品もあります。
換金性も高く、解約手数料はかかるものの、基本的に解約手続きをすればいつでも現金として受け取ることができます。
投資信託は、一般に広く販売することを前提に募集されるため、ファンドの運用方針、投資に係るリスク、手数料など、投資家にとって重要な情報が公開されています。
このため、各投資家が投資の経験や目的に応じて自分にあったファンドを見つけることが期待できます。
このように、最低投資金額が低く、換金性は高い、情報開示が充実しているファンドが、一般的に個人投資家に向いているファンドと考えることができます。
例えば、上場型の投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)などはその典型と言えます。
4.プロ向けファンドへの個人投資家による投資
以前は、いわゆるプロ向けのファンドと言われる適格機関投資家等特例業務で運用されるファンドに、49名までの一般投資家が出資することができました(適格機関投資家等特例業務について、詳しくは後日触れます)。
このファンドは、その販売や投資運用についてほとんど規制を受けることなく、また、私募で販売されるため、法令上の情報開示や投資家保護についての規制が限られていました。
このため、このような特徴を悪用したファンドに、投資経験の乏しい高齢者等が運用方針やリスクをよく理解できないままに勧誘され、多額の損害を被るトラブルが多発しました。
このような情報開示や投資家保護が充実していないファンドは、一般の個人投資家が投資するにはリスクが高いものと考えるべきです。
なお、現在では、適格機関投資家等特例業務で運用されるファンドへ投資できるプロ以外の個人投資家の要件は厳格化されています。
●GT東京法律事務所によるファンドの組成、法務、税務解説記事一覧
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本記事では、覚書(サイドレター)の詳細について詳しく解説します。
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本記事では、償還の仕組みについて詳しく解説します。
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