ルクセンブルク籍ファンドの4つの種類をGT東京法律事務所の弁護士が解説
本記事の執筆者
大橋 宏一郎(弁護士) | 慶応義塾大学法学部卒(1989年)、コロンビア大学ロースクール法学修士号取得(2001年)、日本と米国NY州の弁護士資格を持つ。 主な取扱分野は、国内外の銀行取引、スポンサード米国預託証券プログラムの設定等の資本市場取引、ファンドおよび投資運用関連事案(プライベート・エクイティ、ヘッジ・ファンド、REIT)を含む、様々な金融取引事案およびコーポレート事案(特に合併買収、企業再編取引)。 GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLPの東京事務所)に所属。 |
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1.はじめに
前回お話ししたケイマン籍ファンドに並んで人気が高い外国籍ファンドはルクセンブルク大公国(ルクセンブルク)籍のファンドです。
前回記事:なぜ外国籍ファンドはケイマン諸島が多いのか?4つの理由をGT東京法律事務所の弁護士が解説
2.ルクセンブルクとは
ルクセンブルクは、ヨーロッパ西部に位置し、フランス、ベルギー、ドイツと国境を接する小国です。
EUの原加盟国の1国で、EUの法令に服しています。
いわゆるTax Haven(租税回避地)と言われる法域の一つで、非居住者に対する課税は優遇されています。
3.ファンドビークルの種類
ルクセンブルク籍のファンドは、適用される法令と利用できる投資ビークルの法形式により分類されます。
3-1.①UCITS(Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities)
一般投資家から拠出を受け、流動性のある金融資産に投資を行うオープンエンド型の投資ビークルに適用がある規制です。
UCITSに基づき設定されるファンドは一定の投資制限に服します。
また、UCITSは、EU加盟国の1国で発行登録をすれば、簡単な手続を履践するだけで他のEU加盟国でも自由に販売できるというEU Passport制度を採っています。
UCITSの適用を受ける投資ビークルの種類は以下の2つです。
‐Fund Common de Placement (FCP)
FCPとは、投資家から拠出された資金のプールです。
独立した法人格は有さないため、投資家はこの資金プールの共同保有者としてFCPに対して持分権を保有します。
我が国においては、その建付けの類似性から、長らく外国投資信託として取り扱われています。
‐Societe d`Investissement a Capital Variable (SICAV)
SICAVは法人型投資ビークルです。
UCITSファンドは、原則として、ルクセンブルク国内において課税されません。
また、非居住者投資家が配当やキャピタルゲイン等について課税されることはありません。
3-2.②SICAR(Société d’Investissement en Capital à Risque)
UCITSに比べ、より軽い、柔軟な規制です。
主として、Well-Informed Investors、すなわち最低125,000ユーロを投資するか、リスクを理解し適切な投資判断を行うのに十分な経験・知識のある適格投資家向けの、低流動資産(Risk Capital)に限定して投資するプライベート・エクイティやベンチャー・キャピタル等の投資ビークルに適用される法律です。
SICARファンドは、ファンド設立について、ルクセンブルクの金融当局(CSSF)から事前に認可を取得することが必要です。
SICARファンドは、以下の投資ビークルを利用することが可能です。
- ‐公開有限責任会社(PLC – Société Anonyme)
- ‐非公開有限責任会社(LTD – Société à Responsabilité Limitée)
- ‐有限責任組合法人(SCA-Societe en Commandite par Actions)
- ‐有限責任組合(SLP/SCS – Société en Commandite Simple)
- ‐協同組合法人(Coopsa – Société Cooperative organisée sous forme de Société Anonyme)
税金については、原則として法人課税はされますが、ファンド取得税、源泉税、VATは、徴収されません。
3-3.③SIF(Specialized Investment Funds)
SICARと同様に、柔軟な規制を受けるファンドに適用される法律で、Well Informed Investors向けに設定される投資ビークルに適した制度です。
低流動資産への投資に限定するSICARのような投資対象に対する制限はありませんが、分散投資義務があります。
従前はSIFファンド設立について、CSSFから事前に認可を取得する必要はなかったのですが、悪用事例が増えてしまい、現在ではSICARと同じく、原則として事前認可が必要となりました。
SIFファンドは、投資ビークルとしてFCP、SICAV等を利用することが可能です。
税金については、法人税が非課税であり、源泉税も徴収されません。
3-4.④RAIF(Reserved Alternative Investment Fund)
2016年に制定された法令で、特徴としてはSIFとSICARの両方の性格を併せ持ちます。
したがって、投資対象に制限はなく、緩やかな分散投資義務を負うことになります。
また、設立にあたりCSSFの事前認可は不要です。
RAIFファンドの対象となる投資家は、Well Informed Investorsに限定されます。
法制定以来、高い人気をほこるファンド類型です。
RAIFファンドは、SIFファンド同様、投資ビークルとしてFCP、SICAV等を利用することが可能です。
税金については、原則としてSIFに類似する税制が適用されます。
すなわち、法人税が非課税であり、源泉税などは徴収されません。
●GT東京法律事務所によるファンドの組成、法務、税務解説記事一覧
OANDA証券では、GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLPの東京事務所)監修のもと、ファンドの組成、法務、税務などのコンテンツを豊富に提供しています。
0.イントロダクション – ファンドの組成、法務、税務について専門家が解説
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プライベートエクイティファンドの種類の一つに、ベンチャーファンドや不動産ファンドなどがあります。
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ファンドには、アクティビスト・ファンドというものがあります。
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個人投資家にとって身近なファンドの方形式は、投資信託です。
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日本で投資ファンドを組成する場合、匿名組合や投資事業有限責任組合が多く使われています。
本記事では、投資事業有限責任組合の詳細について詳しく解説します。
9.なぜ外国籍ファンドはケイマン諸島が多いのか?4つの理由をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ケイマン籍のファンドは、投資家やファンドマネジャーからの人気が高い外国籍ファンドの一つです。
本記事では、ケイマン籍のファンドが人気な理由について詳しく解説します。
10.ルクセンブルク籍ファンドの4つの種類をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ケイマン籍のファンドの他にも、ルクセンブルク籍ファンドも人気を集めます。
本記事では、ルクセンブルク籍ファンドが人気の理由について詳しく解説します。
11.プロ向けのファンドと個人投資家向けのファンドの違いをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドには、個人投資家を対象としたもの以外に、個人投資家を対象としていないものも多くあります。
本記事では、プロ向けの投資ファンドについて詳しく解説します。
12.投資ファンドの5つの運用戦略についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ヘッジファンドでは、相場がどちらに動いてもいいように、様々な運用戦略を駆使して絶対的な収益を狙います。
本記事では、ヘッジファンドの運用戦略について詳しく解説します。
13.ファンドの運用・販売に関する法令(金商法、投信法、その他)をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの販売や運用には、様々な法律に気をつけなければなりません。
本記事では、わが国日本でファンドの販売や運用をするにあたり、どのような法律が適用されるのか詳しく解説します。
14.ファンドの販売で必要なライセンスをGT東京法律事務所の弁護士が解説
日本国内でファンドの運用や販売を行うには、登録や届け出などが必要です。
本記事では、ファンドの運用や販売を行う上で必要なライセンスについて詳しく解説します。
15.ファンドの開示(公募)要件をGT東京法律事務所の弁護士が種類ごとに解説
ファンドの有価証券を日本の投資家に対して発行する場合、原則としてファンドの情報についての開示が必要です。
本記事では、具体的にどのような情報を発行しなければならないのか、発光する有価証券ごとに詳しく解説します。
16.ファンドの開示(私募)の要件をGT東京法律事務所の弁護士が種類ごとに解説
ファンドを発行する場合、原則有価証券届出書による開示が必要ですが、私募として発行開示規制が免除される場合があります。
本記事では、ファンドが発行する有価証券の種類により私募の要件は異なるため、その種類ごとに私募の要件を詳しく解説します。
17.ファンドの運用に必要なライセンスをGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの運用者は、いくつかのライセンスが必要です。
本記事では、ファンドの運用に必要なライセンスについて詳しく解説します。
18.ファンド運用ライセンスの例外をGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドを日本国内で販売する際は、投資運用業の登録が原則必要ですが、例外もあります。
本記事では、ファンドを日本国内で販売する場合でも、例外的に投資運用業の登録を必要としないケースについて詳しく解説します。
19.ファンド販売・運用ライセンスの例外(適格機関投資家等特例業務、海外投資家等特例業務、移行期間特例業務)
本記事では、ファンドを日本国内で販売する際の例外である、適格機関投資家等特例業務、海外投資家等特例業務、移行期間特例業務について詳しく解説します。
20.ファンドの設立手順についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドを設立するにはどうしたらよいでしょうか?
本記事では、投資信託の設立手順や投資事業有限責任組合によるファンド設立手順、ケイマン籍Exempted Limited Partnershipによるファンド設立手順について詳しく解説します。
21.ファンドの発行で必要となる届出や登録などについてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの販売や運用では様々なラインセンスが必要ですが、ファンドの発行に当たっては、種類に応じて届け出や登録が必要です。
本記事では、種類に応じてファンドの発行において必要な届け出や登録について詳しく解説します。
22.ファンドの投資対象、投資信託の投資対象の制限についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドは、不動産や株式などが一般的ですが、FXやCFDなどを対象としたものもあります。
本記事では、FXやCFDを対象としたファンドはどのようなものか詳しく解説します。
23.契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの発行にあたり必要なものに、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面があります。
本記事では、契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面について詳しく解説します。
24.目論見書とは?仕組みや交付義務などをGT東京法律事務所の弁護士が解説
目論見書は、有価証券に関する情報を投資家へ確実に届ける手段として作成されるものです。
本記事では、目論見書の詳細や作成義務、交付義務などについて詳しく解説します。
25.リミテッド・パートナーシップ契約(LPA)とは?特徴的な10の条項をGT東京法律事務所の弁護士が解説
リミテッド・パートナーシップ契約(LPA)とは、外国籍PEファンド等で多く採用されるリミテッド・パートナーシップ形式のファンドにおける基幹契約のことです。
本記事では、LPAにおける契約条項のうち、特徴的な条項をいくつか詳しく解説します。
26.引受契約とは?規定される3つの事項についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
リミテッド・パートナーシップ契約(LPA)では、引受契約というものが締結されます。
本記事では、引受契約で規定されるいくつかの事項について詳しく解説します。
27.覚書(サイドレター)とは?盛り込める内容についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
覚書(サイドレター)とは、投資家との間で、LPAや引受契約に明記されていない事項を取り決めたり、既存の契約内容を変更するための覚書です。
本記事では、覚書(サイドレター)の詳細について詳しく解説します。
28.投資家への運用財産に関する報告義務についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドの運用者は、投資家に対してファンドの運用状況等を記載した運用報告書の作成、交付義務が規定されています。
本記事では、ファンドへの投資後に、投資家に対して行われる運用財産に関する報告について詳しく解説します。
29.ファンド持分の償還についてGT東京法律事務所の弁護士が解説
投資資金の回収方法には、いくつかありますが、償還という方法が一般的です。
本記事では、償還の仕組みについて詳しく解説します。
30.ファンドの終了|清算と解散手続きについてGT東京法律事務所の弁護士が解説
ファンドが活動を終了する場合には、いくつかの手続きが必要です。
本記事では、LPAで規定されるファンドの解散及び清算について詳しく解説します。
31.有限責任と無限責任の違いとは?有限責任の重要性や例外等について詳しく解説
ファンドには、リスクがつきものです。
本記事では、ファンドのリスクである限責任・無限責任の違い、投資家の有限責任の重要性及びその例外について詳しく解説します。
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